［お偲び］ 伊藤七郎 氏

備考：生まれ育った設楽町川向の集落にシダレモモを植え続け、「奥三河の花咲かじいさん」として親しまれてきた。
1965年、養蚕の衰退で用済みとなった桑畑に、シダレモモを植え始めた。種から苗を育て、近所にも配った。集落のシダレモモは年々増え、一時は2000本近くが咲き誇った。町観光協会は一帯を「しだれ桃の里」と名付けてＰＲし、毎春、多くの花見客でにぎわった。川向は、設楽ダムの水没エリアになっている。2013年、60世帯が暮らした集落はこの年の暮れ、無人になった。移転後も川向に通い、剪定や草刈りを続けた。田口の高台に立つ新居の周囲にも、200本のシダレモモが植えられている。今春、花を眺めながら「来年も再来年も見たいでのん。まだまだ頑張らにゃあ」と語っていた。シダレモモは設楽町の田峯地区、東栄町の月地区など奥三河各地に広がった。毎年春、赤や白、ピンクの花に包まれた集落は、間もなく設楽ダムの水底に沈む。