[おくやみ]山崎正和 氏(劇作家、評論家)86歳 2020年8月19日逝去

[お偲び] 山崎正和 氏(劇作家、評論家)

山崎正和(やまざき・まさかず)氏
命日: 2020年8月19日 3時2分
(兵庫県内の病院で)
年齢: 86歳
出身: 京都府京都市
肩書: 劇作家、評論家
備考:葬儀は近親者で施行。
5~14歳を主に戦時中の旧満州(現中国東北部)で過ごした。京都大文学部に入学して美学を専攻し、同大大学院在学中から戯曲を執筆した。1963年、室町幕府3代将軍の足利義満と、能楽を大成した世阿弥とを光と影に見立て、民衆と芸術家の対立を描いた戯曲「世阿弥」で演劇界の登竜門である岸田国士戯曲賞を受賞、気鋭の劇作家として注目された。演劇、小説、詩など幅広い分野の評論も手がけ、72年に近代日本文明論「劇的なる日本人」で芸術選奨新人賞を受章。73年には森鴎外を新たな視点で論じた「鴎外 闘う家長」で読売文学賞を受賞した。関西大、大阪大教授を歴任、教育者として後進の育成に当たる傍ら、ギリシャ神話に基づく「オイディプス昇天」などの劇作、「病みあがりのアメリカ」「不機嫌の時代」の文明評論など、学問やジャンルの枠にとらわれない幅広い視野で活動を展開。84年発表の評論「柔らかい個人主義の誕生」(吉野作造賞)では、当時起きていた日本の消費社会の変化を取り上げ、知識集約型産業が中心となる「脱産業化社会」では、人々はモノではなく、時間を消費し、他人に自らを表現する社交を楽しむようになると予言した。また、「顔の見える大衆」の登場を肯定的にとらえた。それはグローバル化の進展で国家などの組織が衰退する中で、個人に心の居場所を与えるものとして社交による人間関係を重視した「社交する人間 ホモ・ソシアビリス」(2003年)などの文明論へとつながっていく。他の著書に「室町記」「文明としての教育」「世界文明史の試み 神話と舞踊」などがある。劇作には、歴史を大きな視野からとらえた「実朝出帆」や、米国の女性写真家マーガレット・バーク=ホワイトの生涯を描いた「二十世紀」などの話題作を発表した。阪神大震災のあった95年には、ナチスによるリトアニアでのユダヤ人虐殺の史実に基づく「GHETTO/ゲットー」を神戸市で上演、大きな反響を呼んだ。日本古来の伝統と欧州の演劇を結びつける戯曲と、鋭敏な感受性に裏打ちされた評論はともに高く評価された。サントリー文化財団副理事長も務め、社会文化活動にも尽力した。自らを「文化的保守」と位置付け、佐藤栄作内閣以来、時々の政権のブレーン役を務めた。政府の「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」メンバー(01~02年)米エール大に留学し、米コロンビア大客員教授などを経て、00年から05年まで東亜大学長。07年から09年まで文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の会長も務めた。06年文化功労者、11年日本芸術院賞・恩賜賞、18年文化勲章。
参照:
・ 山崎正和さんが死去 劇作家・評論家、86歳
・ 劇作家の山崎正和さん死去、86歳 柔らかい個人主義
・ 山崎正和氏死去、86歳 劇作家、評論家「柔らかい個人主義」―文化勲章受章

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