川越市の葬儀、終活を考える(1)[川越市民聖苑やすらぎのさと]
川越市の葬儀で最初に考えたいことは、市が運営する「川越市民聖苑やすらぎのさと(以下、やすらぎのさと)」を利用することである。川越市民であれば、「やすらぎのさと」を利用するメリットは大きい。しかし、利用者が多いことによる「式場待ち」問題も考えておく必要がある。
※参考取材記事
・葬儀を支えることは福祉の向上に資する「川越市役所」(埼玉県川越市)
・市民が安心できる葬儀のために「川越市民聖苑やすらぎのさと」(埼玉県川越市)
「やすらぎのさと」を利用するメリットは、「一般的な葬儀が安い料金でできる」点にある。以下、ポイントを纏める。
ポイント1:「葬儀料金の上限を、川越市が制限している」
「やすらぎのさと」では、基本的な葬儀を270,000円(税抜)以内で施行するように市が規定している。また、オプション料金を含めた総額で470,000円(税抜)を超える葬儀はできない(火葬料、市民聖苑使用料、僧侶等謝礼、お清め等飲食代、会葬御礼及び香典返しを除く)。この規定により、市民は葬儀料金が過剰に高騰することから守られる。尚、この規定は「やすらぎのさと」の葬儀にのみ適用され、それ以外の式場では対象外となる。
ポイント2:「一般的な葬儀環境が整っている」
「やすらぎのさと」では、式場・祭壇・遺族控室・法要室・安置室・駐車場など一般的な葬儀に必要な環境が整っている。式場使用料は、祭壇や遺族控室込みで、60人用が通夜15,000円・告別式15,000円、100人用が通夜25,000円・告別式25,000円、150人用が通夜40,000円・告別式40,000円となっている。祭壇は仏式だけでなく、神式やキリスト教、友人葬などにも対応している。法要室の使用料は2時間で2,500円、安置室の使用料は1棺24時間で1,000円と、いずれも安価だ。駐車場は、約300台分ある。最寄駅からバスも運行している。
ポイント3:「川越市民の多くが利用している」
「平成25年度 事務事業評価シート」を見てもらいたい。「やすらぎのさと」の年間稼働率は、約90%である。また、市民の死亡者数に対する「やすらぎのさと」の利用率は、43.9%である。「やすらぎのさと」の式場はほぼ毎日利用されている状態で、かつ、市の死亡者の約半数は「やすらぎのさと」を利用していることを示している。
さらに書くと、「やすらぎのさと」には年間約7千5百万円(平成24年度)の財源が充てられている。利用者の使用料で賄いきれない運営費には、税金が使われている。だから民間と比較して安価に利用できるし、市民のための施設なのだから利用しないと勿体ないという見方もできる。
このように、川越市の葬儀では「やすらぎのさと」を利用するメリットは大きい。
一方、利用者が多いことによる「式場待ち」問題も頭に入れておかねばならない。
[予約が早く埋まる、60人用の第三式場] |
冬場は特に厳しい、「式場待ち」問題
改めて「平成25年度 事務事業評価シート」に書かれている「市民死亡者のやすらぎのさと利用率」の推移に注目してほしい。平成21年度の52.8%から平成24年度の43.9%まで、利用率が年々減少している。施設利用率が毎年約90%と変わらないことを考えると、『死亡者数の増加によって式場不足が顕著になり、利用を諦めざるえない市民が増えている』と考えるのが妥当だ。つまり、「やすらぎのさと」を希望する市民が多いために式場の順番待ちが常態化しており、待つ日数や利用者の状況によっては利用を諦めざるえない市民が増えているということだ。事業評価にも『死亡者が増加する冬季は1週間以上の「式場待ち」が発生している』と課題が書かれている。
ここで、「式場待ち」の問題点を整理しておきたい。
問題点1:「ご遺体の安置費用がかさむ」
式場を待つ分、ご遺体を安置する日数も伸びる。「やすらぎのさと」の安置室が利用できる場合は、ドライアイスは必要なく1日1,000円の追加費用で済むだろう。しかし利用できない場合は、民間の安置室に頼ることになる。民間施設だと費用は高くなり(ある葬儀社では安置室利用とドライアイス交換で1日13,000円程度)、待つ日数に応じてご遺体の安置費用がかさむことになる。
問題点2:「会社等を休む日数が伸びる」
式場を待つ分、通夜・葬儀までの日数は必然的に長くなる。その結果、会社等を休む日数も伸びる。喪主になる人には、基本的に1週間程度の忌引(日数は勤務管理者に確認)が認めらている。しかし、事情によって長期間会社を休めない人もいる。他の親族の事情もある。早く葬儀ができるという理由で、「やすらぎのさと」を諦め、民間式場で葬儀をする人も多い。
問題点3:「家族葬でも(会葬者が少なくても)広い式場を使わざる得ない」
家族葬が主流になり、小規模な式場のニーズが増加している。「やすらぎのさと」でも、60人用の小さな式場から予約が埋まることが多い。しかし、「式場待ち」となると家族葬でも150人用の広い式場を利用せざるえないこともある。式場使用料がかさむ上、広い式場で会葬者が少ないという状況も起こりうる。
死亡者数が増加している現在、「やすらぎのさと」の「式場待ち」は、どの時期にも発生する問題だ。特に冬場は死亡者が増える傾向にあり、待つ期間も長くなる。「式場待ち」にどう対応するか、いつまで待てるか、待てない場合はどの民間式場を利用するのかを考えておいた方が無難だろう。
民間式場の利用を検討することは、同時に葬儀社選びにもつながる。
次は「葬儀社を選ぶ観点」を考えたい。