茨城県かすみがうら市に葬儀会館「トモエホール」はある。運営する「株式会社ともえ」は社員5人と少数精鋭の会社で、その全員が女性だ。当初年間50件に満たなかった施行件数は、昨年までに140件に伸びた(かすみがうら市旧霞ヶ浦町地域の年間死者数のおよそ3分の2)。細やかな気配りがある葬儀施行で、住民の高い支持を得ている。葬儀料金の総額は、平均で140万円(祭壇、料理、返礼品を含む、お布施を除く)。今回、代表取締役の小林弘幸氏に話を伺った(以下、敬称略)。
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2008年設立のかすみがうら中央ホール
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式場
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住民に支持される、女性社員の「気配り」と「感性」
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─── 葬儀施行で大切にしていることは何ですか。
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小林 大切にしていることは、地域の慣習を把握し、滞りなく葬儀を施行することです。この地域は20程集落がありますが、しきたり等は細かい点まで記録を取っています。また、ご遺族や会葬者は以前の葬儀のことをよく覚えています。祭壇飾りなどで以前の葬儀と比べて不備がないように、ご遺族や会葬者の目線で不満が残らないように徹底しています。
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─── 葬儀担当者が「女性」である良さはどういう点ですか。
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小林 ご遺族にとって、担当者が女性の方が話しやすい。ご遺族がご要望を言いやすい。それが一番です。女性の感性、気配りも葬儀に向いています。弊社では彼女達から提案されたサービスを取り入れています。具体的には、彼女達に聞いてみてください。
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社員の方 私達が提案したサービスは、「ご遺族に茶器セットを貸し出す」「料理の天ぷらは『現地揚げ』でお出しする」「会館でお泊りになる方へのアメニティ(客室備品)を男女別で揃える」「お手洗いに一輪挿しを飾る」などです。これらは好評で、現在も続けています。関係会社様の協力が不可欠で大変なこともありますが、ご遺族や会葬者の立場で「あったら良いな」と思うものは提案しています。
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洗浄中の茶器セット
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天ぷらは現地揚げ
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地縁の強い地域、葬儀料金は総額で140万円~150万円
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─── 葬儀料金について教えてください。
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小林 一般的な個人葬の場合、葬儀料金は総額で140万円~150万円に収まります(祭壇、料理、返礼品を含む、お布施を除く)。この地域はご近所の関係が強く、会葬者は平均120人程集まります。多い時には200人を超えることもあります。そのため変動費(料理や返礼品など)は多くなります。一方で、香典収入も上がりますので、ご遺族の負担は軽減されます。
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─── 葬儀を依頼する時、どういう手順になりますか。
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小林 ご家族から弊社に直接お電話いただくことがほとんどです。お電話を受け、まず病院からご自宅へお亡くなりになった方を送迎します。病院から直接会館に安置することもありますが、一度ご自宅へ戻られることが多いです。ご到着に合わせて、葬儀担当者が当家を訪問します。状況をみて、ご葬儀の打ち合わせを始めることもありますし、枕飾りのみをして改めて出直すこともあります。
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─── 遺族が準備しておいた方がよいものはありますか。
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小林 遺影写真でお困りになる方がいらっしゃいますので、生活の節目節目で写真を撮っておかれるといいですね。また、病院からご自宅にお戻りになる場合、生前に使われていたお布団を準備していただくことが多いです。
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事前相談が全体の2割と増加傾向
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─── 事前相談はどのような状況ですか。
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小林 事前相談は年々増えています。今は施行件数の2割程が事前相談をされます。相談内容は、「入院している者がいて主治医から『間もなく』と言われた。万が一のことが起きた場合はどうしたらいいか」といった葬儀までの手順や準備のこと、葬儀料金のことが多いです。
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─── 事前相談はどうすれば受けられますか。
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小林 事前相談もお電話でご連絡いただくことが多いです。担当者がご説明に伺うこともありますし、弊社にお越しいただいて資料を持ち帰ってご検討される方もいらっしゃいます。「自分はこうしたい」というご家族のご要望をストレートに伝えてもらっています。
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事務所にある応接空間
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社員の子供は「しゃちょう」が大好き
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─── 最後に、力を入れていることなどありましたら。
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小林 社員は今も十分働いてくれていますが、社員教育には今後も力を入れます。特に、ご遺族の意に沿いながら提案する力を伸ばしたいですね。上辺だけの葬儀の打ち合わせでは、後になって「こうしたら良かった」という不満が残りますので。ご遺族の方が何を一番求めているのか、どういう応対をしたら重要なご要望を引き出せるのか、そういう力を伸ばしたいです。
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─── ありがとうございました。(2013年9月28日 取材)
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