川越市は、市役所が主導して市民の葬儀を支援している。中心的な取り組みの1つに、5式場を構える「川越市民聖苑やすらぎのさと」(以下、「やすらぎのさと」)の管理がある。「やすらぎのさと」は、公益財団法人川越市施設管理公社(以下、川越市施設管理公社)が、指定管理者制度により管理を代行している。今回「やすらぎのさと」を訪問し、川越市施設管理公社に所属する苑長から話を伺った。
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[川越市民聖苑やすらぎのさと 外観]
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川越市役所と川越市施設管理公社は、「市民のために」葬儀を支援する目的で、一致している。市役所が葬儀全体の枠組みを作る役割ならば、川越市施設管理公社はそれに基づいて運営管理する現場監督だ。施設の保守管理を始め、仕事の内容は多岐にわたる。葬儀の見積書や領収書を確認し、利用者に不利益がないかチェックする。利用者からアンケートを集め、それを参考に改善を図る。市民の不安が減るよう、葬儀説明会を実施する。
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「1ヵ月に1回程度、市民に向けて葬儀説明会を実施しています。広報『川越』にも案内を出しています。市民の葬儀への関心は高まっていると感じますが、当初『施設見学会』と案内を出したら、全く参加者が集まらなかった。代わりに『もしものときに慌てないよう、葬儀の流れを説明』と直したら、20人近く集まりました。」
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[広報「川越」の案内]
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この日も「やすらぎのさと」で説明会が行われていた。20人前後の市民の方が、職員の話に耳を傾けていた。
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「説明会では、施設案内だけでなく質疑応答も行っています。よくある質問は、『費用』のこと、そして『待たずに式場を利用できる方法はないか』ということ。冬場は亡くなる方が増えて、式場が空きません。式場を利用するまでに数日待っていただくこともあります。しかし、『そんなに仕事を休めない』のが実情です。」
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「やすらぎのさと」の式場稼働率は、90%以上だ。一方で、川越市全体の死亡者数に対する「やすらぎのさと」の式場利用率は50%を切っている。数字上でも式場不足が推察できる。
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60人用の式場
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150人用の式場
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式場の構成は、60人用の式場が2つ(利用料は通夜15,000円、告別式15,000円)、100人用の式場が1つ(利用料は通夜25,000円、告別式25,000円)、150人用の式場が2つ(利用料は通夜40,000円、告別式40,000円)となっている。
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「小さな式場から順に埋まっていきます。近年は会葬者が少ない傾向にあります。いわゆる『家族葬』や『一日葬』が増えています。」
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式場には、仏式、神式、キリスト教に対応できる祭壇の準備があり、その祭壇を使用する。外部から祭壇を持ち込むことはできない。花輪も禁止されている。利用者がお互いに円滑に葬儀を執り行えるよう、ルールが定められている。
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遺族控室(居間)
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遺族控室(洗面所)
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式場には、それぞれ隣接して遺族控室がある。式場を利用する遺族は、この控室も利用できる。
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「遺族控室は一軒の家をイメージして作られています。庭があり、気持ちが安らぐよう設計されています。ただし宿泊施設ではないので、仮眠用の布団やアメニティ(歯ブラシや石鹸、シャンプー、タオル等)が必要な場合は、持参していただくか葬儀社等を通じて手配していただくことになります。」
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遺族控室には25人分の茶器が備わっている。電子レンジや冷蔵庫もある。洗面所にユニットバス、また保管用の金庫も置かれている。
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法要室(洋室)
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法要室(和室)
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法要室は、全部で4室ある。
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「法要室は、洋室が3室、和室が1室です。和室は雰囲気が良いのですが、入口に段差がある。ユニバーサルデザインの観点から、対策が必要と考えています。」
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法要室の利用料は、部屋の種類に関係なく2時間で2,500円。
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「式場不足への対策も考えています。その1つが法要室を利用した骨葬プランです。法要室の定員は40人と狭いですが、近親者のみの小規模な葬儀が増えている傾向と待たないで葬儀をしたい遺族の要望を考慮しています。葬儀より前に火葬をしていただくことが前提です。一般的な葬儀の流れと異なりますが、市や葬儀社と詳細を協議しています。」
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特に、葬儀社から協力を得られるよう、川越市施設管理公社は骨葬プランの説明に力を入れているという。葬儀を改善していくには、葬儀社との協同が不可欠だ。葬儀社に協力をお願いしていることは、他にもある。
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「『今、亡くなったけど、葬儀はどうしたらいいか』『葬儀社を紹介して欲しい』という相談はよくあります。私たちは市民の側に立って相談を受けますが、葬儀社の紹介はできません。20社程ある『やすらぎのさと』葬儀取扱店の一覧は、ご案内できます。しかし、最終的にはご自身で葬儀社を選択してもらうことになります。葬儀社には、市民から相談があった場合、迅速に対応していただくよう協力をお願いしています。特に、見積もりをすぐに出せる体制作りをお願いしています。」
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[川越市民聖苑やすらぎのさと パンフレット]
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葬儀社と協同して、市民の葬儀を改善していく。川越市施設管理公社は、市内の約半数の葬儀を見守っている現場感覚を活かして、市民のために尽力している。(2013年11月13日 取材)
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【 参照資料 】
・川越市民聖苑やすらぎのさと(川越市)
・平成24年度 事務事業評価シート 市民聖苑やすらぎのさと管理事務(川越市)
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