[おくやみ]古井由吉 氏(作家)82歳 2020年2月18日逝去

[お偲び] 古井由吉 氏(作家)

古井由吉(ふるい・よしきち)氏
命日: 2020年2月18日 20時25分
(東京都世田谷区の自宅で)
年齢: 82歳
出身: 東京都
肩書: 作家
備考:葬儀は近親者で施行。
空襲で焼け出され岐阜に疎開、終戦を迎えた。東京大大学院修士課程修了(ドイツ文学専攻)後、金沢大や立教大でドイツ文学を教えながら、ブロッホなどドイツ文学の翻訳も手掛ける傍ら、デビュー作「木曜日」を執筆。1970年に30代で専業作家に。山の中で出会った青年と精神を病んだ女子大生の恋愛を幻想的に描いた「杳子」で71年に芥川賞を受けた。80年「栖(すみか)」で日本文学大賞、83年には中年の男と複数の女性の交情を描いた「槿(あさがお)」で谷崎潤一郎賞、87年「中山坂」で川端康成文学賞、90年「仮往生伝試文(かりおうじょうでんしぶん)」で読売文学賞、97年「白髪の唄」で毎日芸術賞を受賞。以降は文学賞受賞を辞退した。日常の深部を掘り下げる筆致は「魔術的」とも評され、読者だけでなく多くの書き手からも高く評価された。作家の黒井千次さん、小川国夫さんらとともに当時の学生運動など政治的活動に距離を置く「内向の世代」の代表作家の一人。作品の多くは私小説的なリアリズム小説で、初期の「杳子」や「妻隠(つまごみ)」から、選び抜かれた言葉でつづられる文章は、日本語表現の極致と評価された。ヘルマン・ブロッホら難解なドイツ文学の影響を受けながら、にじみ出るエロスも感じさせる作風。今昔物語など古典がもつ幻想性を取り込み、日常に生活に夢や幻想が混ざり込むような作品世界を作り上げた。86~2005年には芥川賞選考委員を務めた。晩年になっても創作意欲は衰えず、老いや忍び寄る死の影に思いをはせた作品の執筆を続けた。酒場で作家らを集めて定期的に朗読会も開催した。熱心な競馬ファンとしても知られ、競馬に関するエッセーなども執筆した。
参照:
・ 古井由吉さんが死去 濃密な文体、「杳子」で芥川賞
・ 作家の古井由吉さん死去 「内向の世代」の代表
・ 古井由吉さん死去 芥川賞作家、82歳

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