[おくやみ]大江健三郎 氏(作家)88歳 2023年3月3日逝去

[お偲び] 大江健三郎 氏(作家)

大江健三郎(おおえ・けんざぶろう)氏
命日: 2023年3月3日
年齢: 88歳
出身: 愛媛県大瀬村(現 内子町)
肩書: 作家
備考:葬儀は近親者で施行。
東京大学仏文科在学中の1957年、東大新聞の五月祭賞を受賞した「奇妙な仕事」が評価され、文芸誌に「死者の奢り」を発表。新世代の作家として注目を集め、翌年、戦時中に山村に迷い込んだ黒人兵士とのかかわりを経て成長する少年の姿を描いた「飼育」で当時最年少の23歳で芥川賞を受賞した。戦後民主主義世代の文学の旗手となり、右翼少年の内面を描いた「セヴンティーン」や「性的人間」などで注目された。63年、長男の光さんが知的障害を持って生まれたことが、ひとつの転機となった。翌年、自身の内面を掘り下げた長編「個人的な体験」を刊行。以降、光さんの存在は多くの作品に通底する大きなテーマとなった。67年刊行の代表作「万延元年のフットボール」(谷崎潤一郎賞)は60年安保闘争と100年前の四国の一揆を重ね、神話的なふくらみを持つ物語をつくり上げた。外国文学の影響のもとに築き上げた文体は難渋とも評されたが、故郷の谷間の森のイメージと共に大江作品の基調をなしていった。79年「同時代ゲーム」でも豊かな想像力を用い、四国の村の歴史を神話化した独自の世界観を築いた。また、被爆地・広島での取材体験を元にしたエッセー「ヒロシマ・ノート」を64年から雑誌「世界」に連載。一貫して反核・反戦の立場から言論活動を続け、70年には「沖縄ノート」を刊行した。94年には日本人で2人目のノーベル文学賞を受賞した。日本人作家では68年の川端康成以来の快挙となった。川端のスピーチ「美しい日本の私」と対比させた「あいまいな日本の私」と題して講演し、平和への切実な思いを語った。文化勲章にも内定したが、「国家と結び付いた章だから」と受章を辞退した。翌年完結の「燃えあがる緑の木」3部作を最後の小説と位置付けていたが、親友の音楽家、武満徹の死を経て創作を再開。近年は父の死を取り上げた「水死」(2009年)など自身の分身のような作家が登場する小説を後期の仕事として書き続けた。13年の長編「晩年様式集(インレイトスタイル)」が最後の小説になった。旧来の価値観が根本から覆された終戦時の衝撃から、戦後民主主義に根ざした思想をはぐくんだ。核問題などについても積極的に発言した。04年に日本国憲法を守る「九条の会」を加藤周一や井上ひさしらと結成。11年の東日本大震災後は反原発のデモや集会に参加するなど、社会的な活動を続けた。1973年「洪水はわが魂に及び」で野間文芸賞、83年「新しい人よ眼ざめよ」で大佛次郎賞を受けた。大江健三郎賞などを通し、若手作家の活躍も後押しした。2018~19年に「大江健三郎全小説」(全15巻)を刊行。21年には自筆原稿など資料約50点を東大に寄託した。
お別れの会:
2023年9月13日
帝国ホテル 東京
参照:
・ 大江健三郎さん死去 ノーベル文学賞作家、88歳
・ ノーベル賞作家の大江健三郎さん死去、88歳 戦後文学の旗手
・ 大江健三郎さん死去 ノーベル文学賞作家、88歳
・ 東京で大江健三郎さんお別れの会 作品「私たちに残された財産」 内子出身、3月に死去(愛媛)

追悼の言葉を残す

供花(カラー)