[おくやみ]半藤一利 氏(作家)90歳 2021年1月12日逝去

[お偲び] 半藤一利 氏(作家)

半藤一利(はんどう・かずとし)氏
命日: 2021年1月12日
(東京都世田谷区の自宅で)
年齢: 90歳
出身: 東京都
肩書: 作家
備考:1945年3月の東京大空襲の戦火をくぐり抜けた。1953年に東京大卒業後、文芸春秋に入社。編集者として取材で出会った作家の坂口安吾、元海軍記者で軍事評論家の伊藤正徳らの影響で戦史や昭和史研究に携わり、多くの旧軍人に戦争の実相を聞いた。「文芸春秋」63年8月号に、自ら司会を務めた戦争当事者による座談会を掲載。さらに取材を加え、1965年には同僚の編集者らとともに執筆した「日本のいちばん長い日」を大宅壮一名義で発表した。太平洋戦争終結を決定した45年8月15日正午までの24時間を、軍人など当事者の聞き取りでまとめた作品はベストセラーとなり、映画化もされた。95年には半藤一利名義で追加取材を含めた決定版を出した。編集者として培った取材力を生かし、存命する当事者からさまざまなエピソードを聞き出し、改版過程で偽証をふるい落としていく手法はオーラルヒストリー研究の先駆としても評価されている。文芸春秋では「週刊文春」編集長、「文芸春秋」編集長、同社専務などを歴任。多くの作家との交流をもった。自身も作家として精力的な執筆活動を続けた。江戸っ子らしい軽妙な語り口は、歴史の専門研究の成果を広く一般の読者につないでいく仕事だった。近代史の研究者らとともに勉強会を開き、多くの史料に目を通すとともに、「歴史探偵」と自称し、昭和史の語り部として日本の近代への関心を高めた。テレビの歴史番組などにも出演していた。98年、親交のあった司馬遼太郎の思いを受け継いで書いた「ノモンハンの夏」で山本七平賞を受賞。2006年に毎日出版文化賞特別賞を受賞した「昭和史 1926-1945」「昭和史 戦後篇 1945-1989」はベストセラーに。憲法9条や平和の大切さも次世代に訴えた。「幕末史」「日露戦争史」など昭和史以外の作品への評価も高く、15年には「昭和史の当事者に直接取材し、常に『戦争の真実』を追究、数々の優れた歴史ノンフィクションによって読者を啓蒙してきた」として、菊池寛賞を受けた。妻の末利子さんは夏目漱石の長女筆子さんの四女で、半藤さんも漱石に関連する随筆を多く手掛け、1993年には「漱石先生ぞな、もし」で新田次郎文学賞を受賞した。
参照:
・ 半藤一利さんが死去 作家「日本のいちばん長い日」
・ 作家の半藤一利さん死去、90歳 「ノモンハンの夏」
・ 半藤一利さん死去、90歳 ノンフィクション作家、「日本のいちばん長い日」

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